2008年度授業紹介 ── 大学院

講座名 担当教員 講座内容
文化構造論II (夏2・冬2) 小林康夫 時代と無意識II
この授業は、表象文化論コースと共生のための国際哲学プログラム(博士課程後期)の両方の授業を兼ねるものです。すでに前年度冬学期より「時代と無意識」というタイトルのもとに、さまざまな哲学・思想への問いかけを通じて問題の設定そのものを探ってきましたが、今学期はその継続ないし発展ということになります。内容も授業の形式も多元的で複雑にならざるをえませんので、初回(4月16日開講)に展開モードについて調整をします。原則的には、講義講演と参加者による演習とを交互に行う予定です。
文化制度論I  (夏2・冬2) 杉橋陽一 アドルノ『否定弁証法』講読
一昨年にひきつづいて、アドルノのこの主著のうち「否定的弁証法——概念と諸カテゴリー」の章を読む予定。アドルノ特有の語法などに注意しながら丁寧に解説を進めたい。ただし参加者のドイツ語読解能力や関心によっては、ベンヤミンに大きな影響を与えたフランツ・ローゼンツヴァイクの『救済の星』の講読も第二案として考えています。
文化制度論II (夏2・冬2) 高橋哲哉 宗教とディコンストラクション
表記のような問題関心のもとで、J・デリダのテクストを読み進める。今期は、Derrida, J., Pardonner: l’impardonnable et l’imprescriptible, in L’Herne, Derrida, 2004. を読み、「赦し」をめぐるデリダの問いかけについて考える。英訳もあるので、仏語が読めなくても参加は可能。
文化クリティシズムII (夏2・冬2) 高橋宗五 今学期は引き続きImmanuel Kant, Kritik der Urteilskraft を読みます。今学期はDeduktion der reinen Ästhetischen Urteilを読む予定です。§30から読み始めます。ゼミに参加する人はテクストを各自入手してください。使用する版はどれでも結構です。またドイツ語が読めない人は英語やフランス語などのヨーロッパの言語の翻訳を用意してください。  初回にはカント哲学についての簡単な解説を行い、またカントのテクストを読むに当たっての語学的な注意点などについて話をします。
マルチメディア解析II  (夏2・冬2) 内野儀 RoutledgeのCritical Conceptsのシリーズの一環として出版された、Modern Drama: Critical Concepts in Literary and Cultural Studies の四巻本を読みます。「時代遅れ」と日本語圏では思われがちな「近代演劇」ですが、近年、モダニティが再問題化されていることもあり、新たな理論的アプローチも出現してきており、単に演劇を専門とする学生のみならず、広く芸術、身体、あるいは表象の諸問題を「近代」との関連で考えることに興味のある学生の参加を希望します。この授業では、この四巻本におさめられた論文を批判的に検討するという演習授業を行いたいと思います。まずは、基礎的文献を集めた第一巻からはじめますが、それ以降は、受講者各自の研究的興味にしたがい、読むべき論文を適宜選んで授業で扱うことにします。なお、成績評価は出席と授業に置ける発表とディスカッションの貢献度をベースとし、夏冬学期末に、それぞれ15〜20枚程度のレポートを提出していただき、それらを総合的に判断して行います。また、本授業は英語圏で学術論文を書くとはどういうことか?という問題意識を保ちながら、単に対象論文の内容だけでなく、その形式の問題にも言及するような討議ができればと考えています。夏学期冬学期継続してゆくつもりですが、参加者の人数や興味によっては冬学期には異なる文献を読む可能性もあります。その場合でも、作品ではなく理論的なものを中心とした英語文献を読む授業になります。
伝統と創造II  (夏2・冬2) ドゥヴォス パトリック 冬学期にパリ第8大学のピエール・バヤール教授を招き、「極限の表象」という主題について共同セミナーを開く。ピエール・バヤール先生は冬学期の最初の3回を担当することになる。この主題は先生の今までの文学理論から言って、新しい方法論の道を開くはずであるが、対象は文学に変わりはない。それに対して、ドゥヴォスが担当する夏学期からの時間では主に舞台芸術の領域を考えたい。「危機の身体」を唱えた土方、思考の崩壊に直面したアルトー、あるいはルワンダのジェノサイドを扱った舞台など、必要に応じて原文や関連資料をフランス語で精読しながら、「極限」の諸様相とその定義を検討する。同時に、理論的な枠組み作りの参考になる関連の研究をフランス語で読む作業も行う。(例えばCoquio の収容所文学についての論文)。セミナー形式で、学生の発表が期待される。
文化ダイナミクス演習I  (冬2) 清水晶子 Butler, Judith, and Spivak, Gayatri Chakravorty, Who Sings the Nation-State?: Language, Politics, Belonging (Seagull Books, 2007) を出発点に、ポストコロニアル理論とクィア理論とを交錯させることを試みる。今のところ、SpivakのOther Asias (Blackwell, 2008)へと進み、同時にポストコロニアル・クィア・スタディーズの論文を併せて読んでいく予定であるが、参加者の興味と要請によっては多少の変更もありえる。邦訳のある文献についても、基本的には英語での精読を行うので、そのつもりで参加すること。
文化ダイナミクス演習II  (夏2) 高田康成 世俗化(secularization)あるいは世俗について、いくつかの文献を読みながら考えたいと思います。文献は以下のとおりです。
Karl Loewith, Meaning in History (1949)
Hans Blumenberg, The Legitimacy of the Modern Age (Die Legitimitaet der Neuzait) (1966; 1983)
The Secularization Debate, eds. W. H. Swator Jr. & D. V. A. Olson(2000)
Charles Taylor, A Secular Age (2007)
David Martin, On Secularization: Toward a Revised General Theory (2005)
Gil Anidjar, “Secularism” (2008)
文化ダイナミクス実験実習I  (夏2・冬2) 松岡心平 世阿弥以前から演じられていた名曲、能「海人(あま)」を総合的に考察する。素材となった志度寺縁起、また志度寺に現存する縁起絵などとの関係だけでなく、能「海人」に先行あるいは後続する、文学・芸能・絵画資料が形成する海人伝承、大織冠伝説など、日本の精神史の一潮流をも視野に入れて考えてみたい。音楽、演技、演出面からのアプローチも重要である。
他に、時間があれば、「丹後物狂」(世阿弥改作)を取りあげてみたい。
イメージ分析論II  (夏2・冬2) 中島隆博 (夏学期)
儒学表象のアクチュアリティI:政治的なるものと正統性
中国における儒学復興現象を読みとく。Joël Thoraval先生と共同で行う。使用する言語は英語と中国語である。

(冬学期)
儒学表象のアクチュアリティII:権力と表象
東アジアにおける儒学表象のアクチュアリティについて。国家との関係から考察する。
表象技術論II  (夏2・冬2) 田中純 「政治の審美化」
授業題目は言うまでもなくベンヤミンを踏襲しているが、ファシズムやナチズム体制下における美学的政治の様態よりも、むしろ、その事後性としての「ファシズムの魅惑」(スーザン・ソンタグ)に重点を置き、権力(主権)とその表象について考察する。「審美化」の意味での美学論のほか、政体論、結社論、表象論を主要なトピックとする。詳しい内容は開講時に指示する。
夏学期の特に前半は、修士課程の学生向けに講義をおこなう。日本語ないし英語の参考文献による予習は不可欠である。参加者全員にドイツ語ないし英語の文献について厳密な訳文の作成と関連情報の調査を課題として課す。詳細な作品分析の対象としては、Hans Jürgen Syberberg, Hitler, ein Film aus Deutschlandを予定している(オリジナルの言語はドイツ語だが、英語版も用意する)。ドイツ語能力は履修条件としない。博士課程に在籍する参加者には積極的な貢献がきわめて強く求められる。参加者の人数によっては履修者数の制限をおこない、できるだけ少人数で緻密な分析と議論に徹したい。
なお、冬学期は授業内容を若干変更する可能性があり、この点については開講時に説明する。
表象文化史I (冬2) 松浦寿輝 現代フランスの芸術論を講読しつつ、芸術の諸問題について考察する。教材としてはルイ・マランかジェラール・ジュネットあたりを考えているが、初回に受講者諸君と話し合って決めたい。或る水準のフランス語を正確に読む訓練を兼ねたいので、受講者はフランス語既習者に限定させていただく。
アート・マネジメント論II (夏2・冬2) 長木誠司 シュトックハウゼン再考
昨年暮れに亡くなったドイツの現代作曲家Karlheinz Stockhausen(1928-2007)の音楽作品、音楽観、音楽思想、受容を、その楽譜、文章(音楽論、インタヴュー等)、実際の音、映像を通して総合的に再検討する。その際、同時代を生きた(ている)前衛作曲家(メシアン、ブーレーズ、ノーノ、フィーヴァルツ、ケージ、リゲティ等々)との比較検討を、歴史的/地理的な位置(戦後ドイツ)という文脈の中で行いながら、20〜21世紀のヨーロッパを代表しながらも、理解と誤解に包まれてきたこの作曲家の姿を洗い直す作業を中心に置く。読解する具体的なテクストはドイツ語、英語が中心となる。夏学期は主として1970年代前半までの活動を追い、冬学期は大作《リヒト》に取り組む予定である。
パフォーミング・アーツ論II (夏2・冬2) 河合祥一郎 1回の授業を前半と後半にわけ、前半ではあらゆるシェイクスピア作品を対象にして舞台・映画などにおける個々の表象の実際について論じてもらい、後半ではその基盤となったテクストを読む作業を通じて、performing artsとしてのシェイクスピアをどう捉えたらよいのかを考察する。後半部では A Midsummer Night' s Dreamを取り上げる予定。なお、冬学期については改めて違う授業を組み立てようとは思うが、夏学期の流れを見てから考える。
表象文化論演習I (夏2) 刈間文俊 中国の現代文化と映画を考える
1990年代半ばから急速に消費文化の時代を迎えた中国の文化状況を、内外の論考から検討する。映画はその中心となるであろうし、1980年代の重要性もまた、自明のものである。扱う文献は中国語が中心となるが、中国語未習者には英語文献を担当してもらう等の配慮をする。
表象文化論演習II (夏2) 一條麻美子 昨年度冬学期に引き続き、ディオニュシオス・アレオパギテスの『天上位階論』を読みながら、テクストとイメージの問題について考察する。授業では邦訳を中心に、原文および諸言語訳を対照させつつ読み進めることによって、ディオニュシオス受容の問題にまで踏み込んで考えたい。
表象文化論実験実習Ⅰ (夏2) 岩佐鉄男 ヴァレーズとその周辺
1920年代にはultramodern、1950年代にはNew York Schoolのなかにあって、先駆的な活動を繰り広げた作曲家Edgard Varèseについて考察する。彼自身の音楽作品や著述、彼を取り巻くさまざまな芸術家たちの証言などを手がかりに、同時代の音楽状況をはるかに超える射程をもった彼の《音響の組織化》の意義を多面的に探ってみたい。英語およびフランス語のテクストを使用する予定。
表象文化論実験実習II (冬2) 浦雅春 今年度は冬学期のみの授業。
取りあえず、Susan Buck-Morss. Dreamworld and Catastrophe: The Passing of Mass Utopia in East and West. (Cambridge, Mass.; MIT Press, 2000) の講読を考えているが、間近になってから取り上げる文献は変更になるかもしれない。
いずれにしても20世紀ロシアの映画ないしは芸術に関する英文の文献を講読する予定。
表象文化論実験実習III (冬2) 石光泰夫 基本的には未定だが、舞踏史の再構築を、身体論と絡めて試みる予定である。舞踏に直接かかわらなくとも、身体論からの「表現する身体」へのアプローチであれば、かならずどこかにあてはめることが出来ると信じるので、様々な分野からの発表を期待したい。実験実習であるので、できるかぎり学生諸君の積極的な参加を得て、ユニークな舞踏史を共同で構築できるよう、努めてみたい。
超域文化科学特殊演習I (夏2・冬2) 滝浪幸次郎 近世の演劇
歌舞伎や文楽の作品を読みながら、視聴覚資料を活用し、近世の演劇について考察する。具体的にどの作品を扱うかについては、初回の授業のときに参加者と相談して決定します。この演習は、留学生を対象としています。