2003年度授業紹介 ── 大学院

講座名 担当教員 講座内容
文化創造論I(夏・冬) 小林康夫 戦後日本の表象文化論(1)
日本の戦後──とりあえず仮説的に45年-70年という期間設定──におけるモデルニテの再構築を表象文化論的に分析する作業をする。これからかなり長期にわたる研究をするための基盤的な作業をする予定。すべての文化分野が関係してくるが、当面、今年度は、文学、建築、都市計画などを中心にすることになるだろう。ただし、参加者には、かなりの分担作業を要求するつもりであり、受動的な受講者は認めない。内容の詳細については4月17日の第1回に説明する。
文化制度論I(夏・冬) 杉橋陽一 前学期にひきつづき、ハンス・ブルーメンベルクの論文「修辞法のアクチュアリティへの人間学的アプローチ」の原書講読をおこないたい。
文化クリティシズムI(夏・冬) 高田康成 [夏学期]
John Locke, An Essay Concerning Human Understandingを読みながら、感覚と表象と悟性そして統括について考える。

[冬学期]
Stanely CavellとVirilloを読みながら、映画について考える。
マルチメディア解析II(冬) 佐藤良明 ビートルズに(音楽として・現象として)何かしらの関心をいだいていることを参加の前提とします。第1週目の授業の前夜に、ビートルズ(および隣接した事象)との関わりを、どのような学術的探求に発展させていきたいか書きつづって(長さは不問)aki@tg.rim.or.jpまで送信してください。
英語の書物を10冊ほど用意し、2週間のイントロダクションのあと、各自の関心にしたがってアサインされた書物について発表してもらいます。扇情的ジャーナリズム、冷徹な音楽分析、ロックの言説に関する本、スター研究の方法にかかわるもの、いろいろ考えられますが、毎回全員が課題本からセレクトした最低30ページのテクストを精読した上で議論するという授業形式は崩したくありません。
映像やサウンドは授業以外の時間に各自が視聴しておくものとします。
インターネットの活用が欠かせません。ホームページを用意しますので、リンクの開拓と情報供与に積極的に関わってください。>
伝統と創造I(夏・冬) 松岡心平 世阿弥の芸談集『申楽談儀』を読む予定だが、集まったメンバーによって、変更される可能性もある。
文化ダイナミクス演習I(夏) 高橋宗五 昨年に引き続きカントの『判断力批判』を読みます。本来ならば今年は§18から読むことになりますが、カントを読むのは初めてという方のために昨年省略した前書きと序論をまず読み、それから本文の§18から読み始めます。今年は半年だけの授業ですので多くは読めませんが、この矛盾に満ちたテクストを解読するための手掛かりを得るには何をどのように読むべきかを考えながら読み進みます。
テキストはPhilosophische Bibliothek所収の最新版(2001年発行、Heiner F. Klemme 編)を用いますが、その他の版でもかまいません。またドイツ語が出来ない方でも英訳を始めヨーロッパの言語に翻訳された版を用いて授業に参加することもできます。
文化ダイナミクス演習II(冬) パトリック・ドゥ・ヴォス モダン・ダンスにおける(日本の)舞踏の位置づけ
最近の(主にフランス語による)海外における舞踏研究を読み、土方巽の文章などの資料を参照しつつ以上の研究の成果を議論しながら、海外の舞踏の受容と、モダン・ダンスの歴史という大きな枠の中で舞踏のいかなる位置づけが可能なのかという問題を考えてみたい。共同セミナー形式で発表という形で学生の積極的な参加が要求される。
文化ダイナミクス実験実習I(夏) 河合祥一郎 シェイクスピアとは何か、あるいはシェイクスピア作品を読むということはどういうことかという問題を探るために、シェイクスピアとジョン・フレッチャーの共著であるThe Two Noble Kinsmenを詳細に読んでいく。テクストは各自用意すること。アーデン版(Lois Potter, ed., The Arden Shakespeare Series)を考えていたが、2002年9月に出たオックスフォード版(Eugene Waith, ed., Oxford World’s Classics)でもよい。ペンギン版などが入手できればそれでもかまわない。
この授業の実験性は、自らThe Oxford English Dictionaryを用いて自分の力でテクストを読み解くという文学的アプローチと、シェイクスピア的ないしルネサンス的舞台表象とは何かといった演劇的アプローチをいかに融合させるかという点にある。やはりシェイクスピアが他の劇作家とともに書いたEdward III(New Cambridge版)やSir Thomas More (Revels Plays版)についても射程に入れたいが、この2作を直接とりあげることは今学期は無理かもしれない。
文化ダイナミクス実験実習I(冬) 高橋哲哉 ディコンストラクションの諸問題
Jacques Derridaの新著Voyous, 2003, Galileeの精密な読解を通して、国家主権や現代の戦争の問題への脱構築的アプローチの可能性を探る。「ならず者」国家とはいかなる表象システムの問題なのか、が議論の出発点である。
テクストはコピーして配布するが、できるだけ各自で原書を入手してほしい。前期「社会制度変動論」からの継続だが、新規参加も可能。
イメージ分析論I(夏・冬) 刈間文俊 中国映画の諸問題
二つのテーマを想定している。一つは「1990年代のインディペンデント映画論」であり、もうひとつは「中国映画論の現状」である。1990年代の中国におけるインディペンデント映画の隆盛は、国際映画祭で評価されつつ、国内では上映機会のない多くの「地下映画」を生み出した。だが、海賊版DVDとインターネットの普及が新たな流通の場を保証し、彼らは新たな文化領域を創設している。『私のカメラは嘘をつかない』と題された監督インタビュー集を手がかりに、この特異な現象を検討する。映画論の現状は、近年の各国の代表的な中国映画論を比較検討し、映画研究の現状を考えたい。受講は中国語修得者に限定しない。
表象技術論I(夏・冬) 岩佐鉄男 ジョン・ケージとニューヨーク・スクール
1950年代初め、音楽の新しい方向にむかっていたジョン・ケージを中心に、モートン・フェルドマン、クリスチャン・ウォルフ、デヴィッド・テュードアらの音楽家が集まり、ひとつの《楽派》を形成する。今年度の授業では《ニューヨーク・スクール》とも呼ばれるこのグループの活動を、夏学期はモートン・フェルドマン、冬学期はもうひとつのニューヨーク・スクール、すなわち美術界における新たな動きとの関連に焦点をあてながら考えてみたい。授業は基本的に英文のテクストを読み進める形で行い、随時AV資料を参照する。
表象文化史(夏・冬) 一條麻美子 中世ヨーロッパにおけるジェンダーの問題について
参考文献を読みながら、中世独特のジェンダーのあり方を考えていきたい。詳細は開講時。
アート・マネージメント論II(夏・冬) 長木誠司 アート・マネージメント論関係の最近の論文を、英語を中心として読むことを一方の柱とし、もう一方で、現代における歌劇場運営の関連文献を購読する。いずれも個人の発表形態となる。
パフォーミング・アーツ論I(夏・冬) 石光泰夫 ベンヤミンの言語論
ヴァルター・ベンヤミンの著作における言語論を採りあげる。とくに『ドイツ哀悼劇の根源』より以前の著作を問題にし、複製芸術の理論家という曖昧にして浅薄なベンヤミン理解に一石を投じることにする。ドイツ・ロマン主義にも、さらにはひるがえってハイデガーにもつながる「神の言語」の問題系が鮮やかに浮かびあがるはずである。もちろん前期には属さないカフカ論やボードレール論などにも言い及ばざるをえないだろうし、パッサージュ論ほかの著作も適宜参照する。言語論以外の切り口も試みることも、演習の形式では大歓迎である。テクストは一応、ちくま文庫の邦訳とする。
表象文化論演習I(冬) 田中純 「イメージ」概念の再検討をおこなう。
Carlo Ginzburg: Occhiacci di legno: nove riflessioni sulla distanza. Milano: Feltrinelli, 1998(邦訳はカルロ・ギンズブルグ『ピノッキオの眼』、せりか書房)における議論などを手がかりとして、「表象」概念についても再考の射程を広げたい。詳しくは開講時に指示する。
表象文化論演習II(夏) 中島隆博 中国哲学と芸術への問い
この演習では、フランスにおける中国芸術の語られ方をまずは読解する。フランソワ・チャンのテクストとそれを論じたドゥルーズの議論から始める。そして、中国における芸術の語られ方を対置して、芸術への問いとして何が可能かを議論する。
表象文化論実験実習I(夏) 浦雅春 ピーター・ブルックスの古典的名著『メロドラマ的想像力』が明らかにしているように、メロドラマは重要な文化の表象システムとして機能してきた。今期(夏学期)は以下の文献を手がかりに、ロシアにおいてメロドラマ的想像力がいかなる文化を立ち上げ、どのような役割を果たしてきたのかを考える。
McReynolds,Louise and Joan Neuberger. Imitation of Life: Two Centuries of Melodrama in Russia.(Durham & London; Duke University Press, 2002)
表象文化論実験実習II(冬) 松浦寿輝 映像理論の諸問題を考察する。具体的には、映画に関する論文を数篇精読し、そこから出発して、作品分析に寄与しうる理論的なツールの精錬を試みたい。。
表象文化論実験実習III(冬) 内野儀 ドキュメンテーション実習
パフォーマンス・スタディーズの大きな課題として、何を研究対象にし、どこまでを研究のコーパスとして認知するのかという問題があります。広義のパフォーマンスの場合、文化人類学的なフィールドワークや社会学的な調査の方法が有効であることはいうまでもありませんが、舞台藝術に対象を限った場合はどうでしょう?
そこで浮上してきたのがドキュメンテーションという方法です。60年代以降の実験的な舞台藝術の多くが示してきたように、「できあがった作品」 (finished product)よりも創作のプロセスを注視する流れが藝術表象の中心になったことをふまえ、研究者はそのプロセスのどこにどう介在できるのかが問われたとき、その場で消えてしまうパフォーマンスを、そこにいたるプロセスまで含めて「ドキュメント」=記述することが研究のひとつの方法になりました。
この実習授業ではそのような歴史性を踏まえた上で、参加学生の一人一人に、具体的な舞台藝術作品についての「ドキュメント」を行ない、集まった資料を整理したうえ学期末の論文/レポートに仕上げるというプロジェクトをやっていただきたいと考えています。
プロジェクトの対象となるのは、学期中に本番を迎える演劇やダンス、あるいはパフォーマンスということになり、具体的には関係資料の収集、アーティストへのインタビュー、リハーサルへのたちあいなどが、やるべき作業として考えられます。毎回の授業については、当初はいくつかの必要文献を読むことから始めますが(たとえばインタビューの方法論の問題をめぐる文献など)、途中からは各自のプロジェクトの進捗状況の報告をしたり、プロジェクト遂行上の問題点などを話し合う場になると思います。必要な機材等はできるだけこちらで用意するつもりです。
実習授業なので5名程度の規模にしたいと思いますが、興味がある学生の方は開講の1週間前までに、想定されるプロジェクトの概要を400字詰め原稿用紙5枚相当程度にまとめて、担当教官宛て提出してください。開講日時は掲示でお知らせします。
超域文化科学特殊演習I(夏) 滝浪幸次郎 近世芸道論
かぶきを中心として、芸の伝承について考察する。今学期は作者と劇作術に焦点をあてて、まず『戯財録』を読む予定。詳しくは開講日に。