2000年度授業紹介 ── 大学院

講座名 担当教員 講座内容
文化創造論I(夏・冬) 小林康夫 <顔>と表象
夏学期・冬学期を通じて、<顔>の表象(不)可能性の問題系を主題として、理論的考察と芸術作品(下位が・写真・映画等)の分析とを相補的に組み合わせる。当然ながらエマニュエル・レヴィナスの哲学なども参照する。鷲田清一『顔の現象学』(講談社学術文庫)は、この問題系にとっての出発点となる手近な基礎文献だが、われわれとしては「(非)現象学」を目指す予定。
文化制度論II(夏・冬) 高橋哲哉 ディコンストラクションの諸問題
ジャック・デリダのテクストを素材として、責任、決定、贈与、法、正義などの問題を考える。Donner la mort (1999) を中心にする予定。テクストは仏語版を用いるが、仏語を解さなくても英語版で参加できる(コピーを配布)。適宜、このテーマに関連する受講者諸氏の研究発表をおりまぜて進めたい。
文化クリティシズムI(夏・冬) 高橋宗五 『啓蒙の弁証法』を読む
Th.W.アドルノとM.ホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』を昨年度に引き続き読んでいきます。今年は Exkurs II: Juliette oder Aufklarung und Moralから読み始めます。この余論では主にカント、サド、ニーチェにおける啓蒙主義と道徳の問題が扱われています。アドルノとホルクハイマーのテキストが難解なだけでなく、引用されているこれらの哲学者や作家も決して分かりやすくはありません。従って授業では『啓蒙の弁証法』から離れて、カント、サド、ニーチェらのテキストをも読む予定でいます。テキストは数部用意してありますが、入手可能な人は手に入れておいて下さい。
伝統と創造I(夏・冬) 桑野隆 バフチン研究
夏学期は、日本語に訳されていないバフチンのテクストを細かく読んでいく。冬学期は、バフチンに関する最近の研究文献をとりあげる。
文化ダイナミクス演習I(冬) 杉橋陽一 ドイツ近代思想研究
ここ数学期ハンス・ブルーメンベルクの『神話作業』を丁寧に読む作業をつづけてきたが、今年は、彼を中心としながら、ベンヤミン、アドルノ、ショーレム、ブロッホなどの思想家を検証して、終末論的思想の「布置」Konstellation について考察したい。
文化ダイナミクス演習II(夏) 高田康成 映画理論とその歴史
Francesco Casetti, Theories of Cinema 1945-1995 (University of Texas Press,1999) を基本資料として、20世紀後半の映画理論の概略を辿る。
文化ダイナミクス演習III(夏・冬) ドゥヴォス, パトリック ディドロの『俳優に関する逆説』(Le Paradoxe sur le comedien, 起稿1773、刊行1830)を出発点として、フランスの18世紀の俳優論を読み、近代俳優の誕生を考えてみる。学生の積極的な参加が求められる。使用言語はフランス語と日本語。
文化ダイナミクス実験実習I(冬) 河合祥一郎 シェイクスピアと映画
映画化されたシェイクスピア作品は多いが、そのなかから、例えばオーソン・ウェルズ監督・主演『オセロ』、レオナルド・ディカプリオ主演『ロミオとジュリエット』、『アル・パチーノのリチャードを探して』など10本ほど取り上げてみる。初回に予定を決め、併せて参考文献なども紹介する。必要なら授業とは別に上映会も行う。毎回、作品解釈をめぐって重要なシェイクスピア批評をある程度の量、読んでもらうので、覚悟のない方はご遠慮ください。ハイレベルな発表と活発なディスカッションを期待します。なお大学院の授業は毎回出席が原則。都合で欠席する場合は前もって連絡のこと。
文化ダイナミクス実験実習II(冬) 佐藤良明 Media 100 映像編集
ディジタル・インライン編集による映像作品の制作を行う。表現の多くをカメラにおうような映画作品は不適。さまざまなエフェクトを駆使するヴィデオ・クリップのようなもの、CF、あるいは語学教材の制作に適する。機械は一台なので6人程度しか受け入れられない。最初の回に、何をどういう目的で作りたいかお聞きした上で、参加者を確定したい。選ばれたら仕上げる責任が生じる。制作には授業時間以外に多くの作業を要することを心されたい。
イメージ分析論II(夏・冬) 中島隆博 夏学期:分身の表象
この講義では、分身の表象を主題としたい。「中国」の表象を考えるとき、中国において他者を、中国の他者をどのように表象したのか(たとえば、「夷狄」「小人」)ということと、中国が自らを「中国」としてどのように表象したかが問題になる。その際に自らの「分身」あるいは「分身化」という観点から論じ直してみたらどうなるのかを、一方では映像資料や絵画を通じて、他方では文献資料を通じて論じてみたい。夏学期は映画『子供たちの王様』とそれに対するレイ・チョウ『プリミティブへの情熱』での批評からはじめ、幽霊のポリティクスとして、中国の言語論と他者論を見直し、最後に世界の分身化の恐怖について概観する。

冬学期:飲食男女
冬学期では、表象とは異なる仕方での他者との関係がどのようにイメージされたのかを、「飲食男女」という視点から論じる。中心となるのは「食べること」の倫理である。それは、中国的な物の配置の美学(これについてはフランソワ・ジュリアン『物の勢い』によりながら絵画・軍事・自然学について概観する)をはみ出す次元に関わることだろう。
表象技術論II(夏・冬) 田中純 イメージのアナクロニズム
1998年度のアビ・ヴァールブルク研究を継承し、美術史のディスクールにおけるイメージと時間の関係を主軸に、図像学の方法論的考察をおこなう。そのための手がかりとして、現代フランスの美術史家・哲学者 Georges Didi-Huberman の著作 Ce que nous voyons, ce qui nous regarde (Minuit 1992 独訳あり)および Devant l'image (Minuit 1990) などを参照する。参加者各自がテーマに関連する自分の問題意識を活かし、積極的に発表をおこなうことを歓迎する。
表象文化史I(夏・冬) 松浦寿輝 外国人の問題
「外国人であること」について考察する。芸術—文学における「国籍」「国際性」「亡命」「クレオール化」「リゾート」等といった問題を扱う。受講者はできるだけ発表を行ってほしい。
アート・マネージメント論I(夏・冬) 浦雅春 ロシア・モダニズム研究
ロシアのモダンの過程を多角的に検討する。シンボリズムから未来派に至る文学過程、芸術運動を辿るだけでなく、広くジャーナリズムや民衆文化のテーマも視野に入れながら、ロシアにおけるモダニズム意識の生成を考える。授業はCatriona Kelly and Devid Shepherd (eds.), Constructing Russian Culture in the Age of Revolution:1881-1940 (Oxford University Press,1998), Victor Erlich, Modernism and Revolution (Harvard University Press,1944) のほか、Irina Paperno なども参照しながら進める。
パフォーミング・アーツ論I(夏・冬) 長木誠司 開講時に指示する。
表象文化論演習I(冬) 刈間文俊 アジアの都市文化の可能性
1990年代のアジアは、域内経済の発展と相互交流の増大により、共通の都市文化を育む可能性を手に入れた。その形成過程と現状を、映像や音楽、演劇など、さまざまなジャンルについて考察する。おもに中国・香港・台湾の中華文化圏を取り上げるが、日本や韓国が視野に入るのは、当然だろう。テキストを使用するかどうかは未定だが、子細は開講時に指示する。
表象文化論演習II(冬) 一條麻美子 「中世」のイメージ
「中世」という時代の受容について考える。暗黒時代、ロマンティックな時代、理想的時代、幻想文学、SF的時代など、さまざまな形で繰り返し現れる「中世」というイメージを文学、絵画、映画などに見ていきたい。
表象文化論実験実習I(夏) 岩佐鉄男 声の諸相
声は人間にとってもっとも基本的なコミュニケーションの道具であると同時に、もっとも身近な楽器でもある。この授業では音楽・芸能・演劇などに現れるさまざまな声のかたちを考察しながら、みずからの声を用いたパフォーマンスの可能性を実践的に探ってみたい。
表象文化論実験実習II(夏・冬) 松岡心平 -
世阿弥または金春禅竹の能楽論、あるいは多ジャンルの中世芸術論をゼミナール形式で読む。何を読むかは開講時の相談で決めたい。なお、夏学期と冬学期で開講時間が異なるので注意のこと。冬学期は基本的には夏学期の継続としたい。
表象文化論実験実習III(夏) 石光泰夫 精神分析と文学
精神分析に基づくディスクール分析が有効と思われる文学作品(洋の内外を問わず)のリストを最初に呈示して、そこから授業の参加者が適宜選択し、分析結果を発表するという形で授業を進める。リストは精神分析学という枠を確保するために作成するのであるが、ディスカッションのプロセスで精神分析的ディスクールの問題が浮かび上がればよいので、発表の内容には精神分析に必ずしもこだわらない自由度を持たせることにする。また、リスト以外の作品を自分で提案してもよいし、必然性が認められる場合には、文学以外の芸術分野(美術・舞踊・映画)からの選択も可とする。
超域文化科学特殊演習I(夏・冬) 滝浪幸次郎 夏学期:近世芸能論
江戸時代に書かれた浄瑠璃・歌舞伎に関する芸能論を読む。具体的になにを読むかについては、授業開始時に参加者の希望をきいたうえで決めたい。

冬学期:花の文化史
日常の中のハレ花をかざるという行為について検討しながら、花について語られたさまざまな文章を読んでいく。