1999年度授業紹介 ── 大学院

講座名 担当教員 講座内容
文化創造論II(夏・冬) 河合祥一郎 文化現象としてのハムレット
ストア哲学に基づくエリザベス朝のハムレット像は現代のハムレット像と決定的に違う。この授業では本来のハムレット像を原書に当たって確認しつつ、ゲーテ、イエーツ、マラルメ、ロレンス、ジョイス、カフカ、キルケゴールらの著述における現代のハムレット像との差異について論じる。
文化制度論I(冬) 杉橋陽一 ブルーメンベルク研究
ハンス・ブルーメンベルクの"Arbeit am Mythos"(Work on Myth)をフロイトの仕事
と関連させつつ丁寧に読み進める予定(従ってテキストはドイツ語か英語)。
文化クリティシズムI (夏・冬) 高田康成 批評と哲学の古典学的起源について
M.C.Taylor (ed.), Deconstruction in Context: Literature and Philosophy(1986)、Rene' Wellekの文芸批評史、A. Momiglianoの古典文献学的歴史批判、それぞれの英文文献読解をルーティーンとしながら、文芸批評と哲学の耕作する地点を古典学に探る。
マルチメディア解析I(夏・冬) 佐藤良明 現代メディア文化の諸相
アメリカ現代(20世紀後半)のメディア文化についての論考(論文・本の抜粋)から 、幅広く選択して、テキストの批判的講読を行う。夏学期はポピュラー音楽、冬学期 は商業映画をテーマとする。とくに冬学期は参加者の自由発表を中心とする。
伝統と創造II (冬) ドゥ・ヴォス, パトリック 開講時に指示。
文化ダイナミクス演習I (冬 ) 高橋哲哉 ディコンストラクションの諸問題
記憶、喪、トラウマ、証言、責任等のテーマをめぐり、ディコンストラクション及び その周辺の文献を読む。外国語能力は英語のみでも参加可。参加者の研究発表も積極 的に折りこんでいきたい。
文化ダイナミクス演習II (夏) 高橋宗五 「啓蒙の弁証法」を読む
昨年に引き続きホルクハイマーとアドルノの「啓蒙の弁証法」を読みます。今年は補 論の「オデッセウス或いは神話と啓蒙」を読む予定です。初めて出席なさる方は、翻 訳でも結構ですから「啓蒙の概念」をあらかじめ読んでおいて下さい。テクストはド イツ語のオリジナルを用いますが、ドイツ語が読めない方には英語訳のコピーも用意 します。テクストは高橋が用意します。
文化ダイナミクス演習III (夏) 桑野隆 ロートマンとロシア文化記号論
ユーリイ・ロートマンの著作を中心にロシアの文化記号論・歴史記号論関係の文献を 、批判的見解とも照らし合わせながら、読んでいく。 テキスト:Yuri M. Lotman, Universe of the Mind: A Semiotic Theory of Culture (1990) 他。
文化ダイナミクス実験実習I (夏) 小林康夫 風景(あるいは庭)の思想と現代の文化創造
現代における「風景」の問題を取り扱う。エコ・システムとしての「場」の論理(倫 理=美学)を具体的な事例を通して考える。(フィールドの可能性もあるので、出席 には条件をつける)。
文化ダイナミクス実験実習II (夏) 松浦寿輝 日本の詩的モダニティ
「新体詩抄」、北村透谷から萩原朔太郎までの日本近代詩の流れをたどった前学期に 引き続き、時期的に後続する第二次世界大戦後の詩(狭義の「現代詩」)の諸問題を 論じる。日本の詩的言語におけるmodernityのありかたを、声と文字、身体性、政治 と倫理、共同性、等々といったテーマを通じて考察してみたい。今学期からの参加も もちろん可能である。
イメージ分析論I(夏・冬) 刈間文俊 日本というイメージ
日本は世界でどのように語られてきたのか。アジアとくに中国人地域では、戦争の影 響が大きく、長い間にわたり、日本は悪のイメージで語られてきた。中国、香港、台 湾を中心に、映画や文学、演劇などのジャンルで、日本のイメージがどのように消費 され、再生産されてきたかを、具体的な作品にそくして分析する。日本に仮託して、 彼らはなにを描いてきたのか、そこにはたんなる過去の贖罪では語り切れぬ複雑な問 題が現出するだろう。夏学期は、主に中国人の描く日本イメージを歴史的に概観し、 冬学期は日本が描く中国イメージにも言及したい。作業分担などは開講時に決める。
表象技術論I (夏・冬) 岩佐鉄男 開講時に指示。
表象文化史II (夏・冬) 一條麻美子 中世の詩人たちの肖像
14世紀に成立した「大ハイデルベルク歌謡写本」の挿絵を手がかりに、中世の詩人た ちの肖像がどのような伝統のもとに描かれたのかを考察する。同時に挿絵に描かれた 風俗なども見ていきたい。
アート・マネージメント論II (夏・冬) 松岡心平 能楽論研究
芸団の統領であった世阿弥もしくは金春禅竹のなるべく代表的な能楽論をゼミナール 形式で読む。テキストは初回の授業時に、相談の上、決めたいと思う
パフォーミング・アーツ論I(夏・冬) 石光泰夫 身体論のゆくえ
身体論の諸相を考察する。そのさいフリードリヒ・キットラーの著書『グラモtォン ・フィルム・タイプライター』にみられる明快な身体観、すなわち身体ということが 問題になるのはイマジネールなレヴェルにおいてのみである、それはすなわち18世紀 末から19世紀をつうじてせいぜい今世紀はじめに至るまでの身体空間においてだけで あったという考え方をベースにする。このテーゼが提唱する身体論の考古学が本授業 のテーマであり、この身体論が生成する以前、そしてまたそこではもはや身体論は不 可能であるといわれている現代をも含めて、このテーゼの是非を、できるだけ多くの 具体例を参照しながら検討する。学生による発表形式ですすめたい。冬学期は、夏学 期の身体論をうけて、それをパフォーミング・アーツに引き寄せながら敷衍してゆく 。具体的には舞踊における身体論の可能性を探ることが主眼となる。
表象文化論演習II(冬) 中村健之介 ドストエフスキー:多様な観点から
少女好み、幻想、阿片、父親、身体感覚、日本人のドストエフスキー論、死の恐怖、 劣等者の自己発揮願望、政治青年、凶悪犯罪者集団の中で生きる方法、柳美里と『罪 と罰』などなど、ドストエフスキーをめぐるさまざまな問題を語る。
表象文化論実験実習I (夏) 田中純 開講時に指示。
表象文化論実験実習II(冬) 浦雅春 ロシア・アヴァンギャルド再考
ロシア・アヴァンギャルド芸術に関しては1960年代以来、欧米をはじめ、ロシア、日 本でもかなりの研究成果があげられている。近年に至っては今世紀初頭に開花した革 命的な実験芸術というよりはむしろ、スターリン文化を準備した芸術思考といった側 面からの捉え返しが盛んである。授業ではこのようにさまざまな言説に囲繞されたロ シア・アヴァンギャルドをもう少し幅広いコンテクストのなかに置き直して整理をし 直す。とりわけ身体論との関連を考えていくことになるだろう。テクストとしては、 Bowlt, John E. & Olga Matich,Laboratory of Dream: The Russian Avant-Garde and Cultural Experiment (Stanford: Stanford University Press, 1996) など を使用する予定。
表象文化論実験実習III(夏) 長木誠司 日本語によるオペラの課題
90年代に入って、日本のいろいろな作曲家がオペラに興味を示し始め、今年度前半も 初演、再演が多いが、必ずしも成功していないという評価がたえずつきまとっている 。授業では、日本語によるオペラ創作の歴史を振り返りながら、音とことばの問題、 台本の問題、音楽の問題等、いくつか視点をしぼって、日本語によるオペラの現状を 捉え、そのありうべき姿のデッサンを描ければよいと思う。
超域文化科学特別研究II(共通科目)(冬) 長木誠司 音楽学の現在
音楽学の最近の動向を伝える、基本的な文献(欧文)を講読する。毎回、発表形式で行うが、採り上げる文献は参加する面々と相談して決めたい。
超域文化科学特殊演習I(共通科目)(冬) 滝浪幸次郎 近世の芸能
歌舞伎・文楽の作品や芸談を読みながら、近世の芸能について考察する。今回は、『作者式法戯財録』、『竹子集』、『音曲口伝集』などのテクストを取りあげ、劇作術 を中心に検討する予定。視聴覚資料もあわせて活用したい
超域文化科学特別講義III(共通科目) (共通科目)(夏) ニーナ・コルニエッツ(客員教授) 近世の芸能
いくつかの日本映画/物語テクストを対象に、そこで機能する「視覚経済」の枠組み について考察する。主たる論点は、(1) 近代日本の美学をささえる視覚性、またはジ ェンダー・パフォーマンスの技術とはいかなるものであるか。(2) 美学的なものは、 階級、ジェンダー、権力とどのように関係しているか。(3) 西洋の植民地主義者のま なざしと、日本の内部における日本的美学についての言説はどのような関係にあるか 。授業は、講義のほかに、ディスカッションや学生の発表もまじえてすすめる。