2004年度授業紹介 ── 教養学部後期課程


講座名担当教員名講座内容
表象文化基礎論(冬) 刈間文俊中国映画史を考える 中国映画は、いまや中国語圏映画として国際的にもマーケットを確立しているかに見える。だが、国際的な評価の高まりとは逆に急速な斜陽化も進行しており、産業として存立の岐路にも立っている。2004年は中国人による映画制作の百周年であるが、その百年史の主要なテーマについて、駆け足で考察する。京劇と日本の影、上海映画とハリウッド、日本占領下の映画は奴隷か、社会主義の独自の映画世界、中国語圏の同時多発ニューウェーブ、地下映画化インディペンデントか、といったテーマを想定している。時間の制約はあるが、なるべく多くの映像を紹介し、ともに問題を考えたい。
・成績評価:レポートによる課題を課す。
表象文化基礎論演習(夏) 石光泰夫ヴァルター・ベンヤミン『ドイツ悲劇の根源』を読む
ベンヤミンのエッセンスが凝縮されていると思える『ドイツ悲劇の根源』を読む。準備作業としては初期のものも講読する(たとえば『ゲーテの親和力について』など)。また後期のものも、『ドイツ悲劇の根源』の延長上で一部読む。テクストは、邪道であるが、筑摩文庫版をもちいる。もちろんドイツ語の知識はあるほうがよい。参加者による発表形式で授業をすすめる。
文献:
『ドイツ悲劇の根源』(浅井健二郎訳、ちくま学芸文庫)
『ベンヤミン・コレクション1〜3』(ちくま学芸文庫)
表象文化構造・機能論(冬) パトリック・ドゥヴォスロラン・バルトの演劇理念 50年代の演劇批評の前線を走ったロラン・バルトの演劇についての文章(「Ecris sur le théâtre」でまとめられたテクストを中心として)を読み、舞台空間が社会的なユートピアから個の想像界の一つのトピックになるまで彼の演劇像の変遷を辿ってみる。そこから浮かんでくるはずの複数のテーマ、例えば戦後のフランスにおけるブレヒトの受容、批評という行為の場(あるいは観劇という行為の身体)などについて考えていきたい。学生から積極的な参加が求められる。扱っている文章を原文で読むので、フランス語能力を鍛える決心と努力も要求される。
表象文化相関論(夏) 内野儀過去10年間にアメリカ合衆国のアカデミー賞作品賞を受賞した映画作品を1回に1作品ずつ取りあげ、詳細に検討してゆきます。具体的には、一般観客的な印象批評から映画についての専門的研究への橋渡し的な意味合いを込め、受講者にはそれぞれの専門的興味に従い、一つの作品を特定の切り口と方法論によって批評・分析する内容の発表を行っていただきます。授業では映画を見ることはせず、担当者の発表とそれに基づくディスカッションを行いますので、各自が当該の映画を見てくる(あるいは、すでに見ている)ことが授業参加の前提になります。第1回の授業はオリエンテーション、第2回目には入門的な映画研究のエッセイの具体例(第1回授業時にコピーを配布)を検討し、3回目以降は受講者による発表とする予定です。教科書は定めませんが、3回目の授業までに北野圭介著『ハリウッド映画100年史講義——夢の工場から夢の王国へ』(平凡社新書)を読んでくることを必須とします。
・成績評価:出席と授業における発表とディスカッションの貢献度をベースとし、学期末に自分の発表とディスカッションに基づく400字詰め原稿用紙10〜15枚程度のレポートを提出していただき、それらを総合的に判断して行います。
表象文化史(冬) 高橋宗五今学期の授業は19世紀末から20世紀の後半に至る時期に書かれた重要な戯曲を読みます。イプセン、ストリンドベリー、チェーホフ、ビランデルロ、ブレヒト、ベケット、ハイナー・ミュラー等を予定しています。どの作品を読むかは最初の授業の時に皆さんと話し合って決めたいと思います。授業はゼミ形式で行います。授業の狙いは、戯曲を読む訓練と近・現代演劇を歴史的に俯瞰できるような自分なりの視座を得ることです。
表象文化史演習(冬) 佐藤良明1930年代から1980年代までの古典的ハリウッド映画を毎回1本ずつ扱います。作品名は初回のイントロダクションまでに授業用掲示板(http://sgtsugar.com)にアップしますが、入門編として、ジャンルや題材にはバラエティを持たせるようにします。曜日は未定ですが、可能な限り5限目をあて、6限目めに次週の作品鑑賞を行うよう計らいます(もちろん賃貸ビデオで見てきてもよい)。
映画作品をテクストとして分析する方法の習得が目的で、そのためにまず、作品を見て感じたこと、考えたことを、授業の前夜10時までに、授業用電子掲示板に書き込んでください。クラスメートの感想/意見に目を通してから授業に参加することになります。授業自体は、批評家による英文の作品論(プリント配布)を読み、ポイントとなるシーンを再生しながら、参加者全員で議論していくというかたちで進めていきます。英文ホームページはきわめて豊富な情報源ですから、その活用にも慣れていってください。
表象文化論実習I(夏) 長木誠司19世紀から20世紀にかけて、音楽作品のなかで採り上げられている、ドイツ語で書かれた詩を読みながら、その付曲の様相を分析する。音楽ジャンルとしては、リートが中心となるが、合唱や器楽という形態をとっている作品も射程に入れる。参加者各自が、付曲の可能性や実際について、あるていどの関心や判断基準を持っていることを前提にする。
表象文化論実習II(冬) 表象文化論各教官表象文化論分科所属の教官6〜7人による連続授業。表象文化論という学問分野の基本的な概念・方法論をめぐって、多様な角度からイントロダクションを行う。授業の全回をゆるやかに統合する中心テーマを何らかのかたちで設定するが、これは別途掲示する。表象文化論への進学が決まった2年の内定生はこの授業を必ず受講してほしい。
教科書及び参考文献=別途掲示
・成績評価:平常点及びレポート
舞台芸術論II(夏) 河合祥一郎シェイクスピアの『リチャード三世』を読み解く。ローレンス・オリヴィエ監督・主演(1955英、ジョン・ギールグッド、ラルフ・リチャードソンほか出演)、リチャード・ロンクレイン監督(1995英)(イアン・マッケラン主演、ナイジェル・ホーソーンほか出演)、アル・パチーノ監督・主演『リチャードを探して Looking forRichard』(1996 米)などの映画を参照しながら、原文を読み解く。使用するテキストは、大修館シェイクスピア双書をベースにするが、他の版を用いてもかまわない。
伝統芸能論I(夏) 観世清和実際に能が上演される能舞台に於いて、面、装束(衣装)、作り物(舞台装置)等に触れることによって、能の世界を体験し、日本の伝統文化の心を知る。
伝統芸能論II(夏) 靳飛 京劇における中国人の夢
近代の中国人にとって、京劇とは衣食と同様に重要なものだった。近代以降の中国の動乱相次ぐ過酷な現実は、中国文化の衰退と道徳倫理の崩壊をもたらしたが、中国人は京劇のうちに現実の苦悩をしばし忘れ、同時に中国文化と社会の再建の夢をその京劇に託しもした。京劇とは中国人の魂を観察する窓であり、近代の中国人を理解してはじめて、現在の中国を理解するより確かな手がかりを得られるのである。
昨年度の授業では、京劇の道徳倫理との関連を主に論じたが、夏学期は京劇に表れた中国人の理想像を、主に演技面から考察することとする。
造形空間芸術論I(冬) 小林康夫 最新刊のフランス語による芸術に関する哲学書を1冊読み通す。テクストは複数用意しているが、受講者との相談で決定する。
・成績評価:毎時間の発表とレポートによる。
造形空間芸術論II(冬) 田中純 「ゲニウス・ロキ(地霊)」の考察
1.趣旨:「ゲニウス・ロキ(地霊)」は、建築論、都市論の方法におけるひとつの鍵概念とされているが、いまだその内実は曖昧である。この授業では、鈴木博之による一連の「地霊」論やクリスチャン・ノルベルグ=シュルツの古典的ゲニウス・ロキ論を手がかりとして、「ゲニウス・ロキ(地霊)」概念にまつわる言説を分析し、この概念の再検討をおこなう。そのプロセスには、鈴木をはじめとする東京論の分析を実地に検証する、東京およびその周辺におけるフィールドワークも含まれる。最終的には、みずからあらたな「地霊」を発見することが目標である。

2.授業の方法:言説分析については担当者を決め、レポートをしてもらう。参加者が一学期間に最低1回は発表をおこなう予定だが、人数によってはワーキング・グループに分ける。フィールドワークについてもテーマごとに担当者を決め、その者が中心になって調査計画を立てることとする。

3.評価方法:履修と単位取得のためには、原則として次のすべてを必須とする。
1) 授業における発表:全体評価の約25%。2) レポート1(8000字):自分が授業で発表した内容に関するもの。論文としての形式(註など)を整えて書くこと。全体評価の約25%。3) レポート2(8000字):フィールドワークのレポート。締め切りは卒業予定者とそれ以外とで異なる(学期末に指定する)。論文としての形式(註など)を整えて書くこと。全体評価の約25%。4) 出席点:言うまでもなく、規則的な出席と議論への参加が強く要求される。毎回必ず出席を記録する。全体評価の約25%。

4.授業日程、参考書:冬学期開始前に掲示するが、基本図書として:鈴木博之『東京の[地霊]』(文春文庫)、同『日本の〈地霊〉』(講談社現代新書)、クリスチャン・ノルベルグ=シュルツ『ゲニウス・ロキ』(住まいの図書館出版局)
音響芸術論I(夏) 杉橋陽一「晩年のベートーヴェン」論
アドルノのエッセイ「ベートーヴェンの晩年様式」にょって提出された諸テー マを検討したい。若い頃に書かれたこのエッセイは自らも後年さらに展開して いるが、ほかの音楽学者にも継承され論じられている。授業ではそれらの文献 を読むことでこのテーマを具体的に明らかにするだけでなく、ベートーヴェン 音楽がある種の役割を演じているキューブリックの映画「時計仕掛けのオレン ジ」も参考にしたい。授業の進め方については参加者と相談したいが、基本的 には参加者が課題を報告するという形にするつもりである。
・教科書及び参考書:
アドルノ『楽興の時』(白水社)、同『ベートーヴェ ン論』(作品社)
Maynard Solomon: Late Beethoven
Jost Hermand: Beethoven
音響芸術論II(冬) 岩佐鉄男 楽器論 詳細は授業開始までに追って掲示する。
映像芸術論II(夏) 青山真治映像編集の変遷を映画史の流れとともに考える。
○サイレント期からトーキー初期(グリフィスからフォード、小津、山中に至る同軸上のアクションつなぎ)
○視線による構成(ヒッチコックからクリント・イーストウッドへ)
○アクションによる構成(50年代ハリウッド〜ウエルズ、サーク、レイ)
○編集の脱構築(ゴダール以降)
※ビデオ再生しつつ、コマ単位で成り立ちを調べる。
言語芸術論I(夏) 松浦寿輝主に比喩と修辞の効果という視点から、戦後日本の詩人の仕事を通覧する。時間軸に沿った詩史の流れと、詩的「イメージ」とはいったい何かという原理的な問いとの交点を探ってみたい。まず「荒地」派の詩人の仕事から始めるので、受講希望者は田村隆一や鮎川信夫や北村太郎の代表作を読んでおいてほしい(思潮社「現代詩人文庫」シリーズで容易に入手できる)。ただし、授業で取り上げる作品は適宜プリントして配布する。
教科書及び参考文献=吉本隆明、大岡信、北川透などの諸著作
・成績評価:平常点及びレポート
言語芸術論II(夏) 一條麻美子 中世ドイツ恋愛叙情詩ミンネザングを読む/見る
 中世ドイツで創作されたミンネザングを読みながら、文学/視覚芸術/社会の相互関係を探る。テーマとしては
(1)テキスト読解(邦訳も使用)
(2)受容形態(音楽・舞踏)
(3)写本を読む/見る
(4)社会的役割について
を考えている。受講に当たってドイツ語は必要ではないが、作品の内容はもとより、その音の響きにも関心を持つことが望まれる。
表象文化論特殊講義I(冬) 高田康成詩人シェイクスピアにおける古代ローマの表象
Shakespeareの詩作品The Rape of Lucreceの読解。古代ローマの「共和政」誕生にまつわる神話的エピソードとして有名な「ルクレティアの陵辱」に取材したこの作品を読みながら、政治と詩を横断する表象分析を試みると同時に、演劇作品との関係を考える。
表象文化論特殊講義II(夏) 高橋哲哉「犠牲」の論理・再考
犠牲(サクリファイス)の観念は、宗教の歴史と国家の歴史をつなぐ蝶番の位置に来る最重要観念の一つである。犠牲をテーマとした人類学的研究は多いが、ここでは、21世紀の現代においても国家暴力をめぐる言説につきまとう「犠牲」の論理を対象化し、その歴史的系譜と政治的・文化的機能を検討する。ギリシャ悲劇、E・カントローヴィッチ『王の二つの身体』、E・ルナン『国民とは何か』等、ジャンルを問わず広範なテクストを取り上げる。
表象文化構造・機能論演習(冬) 松岡心平世阿弥あるいは金春禅竹の能のテキストをゼミナール形式で読む。
表象文化相関論演習(夏) 浦雅春タルコフスキー映画の分析。Vida T. Johnson and Graham Petrie. The films of Andrei Tarkovsky : a visual fugue (Bloomington; Indiana University Press, 1994)もしくはMaya Turovskaya. Tarkovsky: Cinema as Poetry (London; Faber, 1989)をサブテクストに使用しながら、タルコフスキーのすべての映画を分析する。
授業では各自が1本の映画を担当して報告を行い、それをもとに議論する。
・成績評価:授業での発表と平常点。
表象文化論特殊研究演習I(夏) 松浦寿夫近代芸術の歴史/理論──キュビスム研究
1907年から1912年にかけての近代芸術の動向を主としてキュビスムという徴のもとにおかれる作品群の分析を通して検討する。その際、Leo Steinberg, Yve-Alain Boisなどのテクストを参照する。また、同時に時間の許す限り、Eve Blau and Nancy J. Troy, Architecture and Cubismの諸論文を検討しながら、キュビスムの原理の他の分野への拡張の様相も考えてみたい。なお、参考文献は開講時に指示する。
表象文化論特殊研究演習II(冬) 近代芸術の歴史/理論──1960年代の芸術と<イメージ>
1960年代の芸術作品におけるイメージの使用のさまざまな様態を検討する。美術史的な符牒としてのポップ・アートと分類されかねない作品を題材として取り上げるが、その際、大衆消費社会と芸術との遭遇といった議論は一切考慮せず、もっぱら個々の作品の形式的な側面に注目する。参考文献は開講時に指示する。
表象文化論特殊研究演習III(夏) 中島隆博哲学におけるオリエントの表象について検討する。その際、ヨーロッパの哲学的言説において、オリエントがどのように表象されてきたのかを、具体的なテクストを通じて考察する。その一方で、それを受けて、東アジアにおいて如何なる仕方でオリエントが再構築され、哲学の国民化に利用されたのかも考えたい。演習であるので、最初の数回でダイレクションを示した後、参加者からの報告を中心に進めていく。 参考文献は開講時に指示する。
・成績評価:平常点とレポートで判定する。
表象文化論特殊研究演習IV(冬) 青山真治デジタルビデオとパソコンを使用した映像作品の制作。
○班分け(基本的に一班4人。人数によって変更)して、各班ごとに一作品を最終週の前週までに制作。
○最終週に上映会とディスカッションを行う。