2003年度授業紹介 ── 教養学部後期課程


講座名担当教員名講座内容
表象文化基礎論(夏) 小林康夫日本の戦後文化を対象フィールドにして、その表象文化論的な分析を行う。文学、思想、建築、音楽、美術などそれぞれのジャンルを取り扱う予定だが、詳細は開講時に説明する。
表象文化基礎論演習(夏) 松浦寿輝戦後日本の短編小説を十数篇選び、精読し、技法、構造、歴史、思想、メディアなど多様な視点から考察する。「短編小説」というジャンルの可能性と限界を徹底的に考究してみたい。
表象文化構造・機能論(夏) 高橋哲哉国家と犠牲 Pro Patria Mori(祖国のために死ぬ)という観念の生成、構造、限界を議論する。近代欧米と日本(「靖国」思想とその将来)のみならず、戦死者の表象、「犠牲」の観念と祭祀、死者の「公的追悼」の諸類型などを広範に調査、考察し、問題の核心に迫りたい。
参考書、資料等はそのつど紹介、手配する。
表象文化相関論(夏) 浦雅春ニューヨークやロンドン、パリ、ペテルブルグなどの町の景観を素材に都市の表象の問題を考える。
教材にはPeter Jukes. A Shout in the Street: An Excursion into the Modern City. (Barkley; University California Press,1991)という英語文献を使用する。
授業は上記文献に基づいた受講者の発表とそれをめぐる討論が中心となる。
表象文化史(冬) 中島隆博ここでは、中国芸術における「線」について考察する。具体的な書画の作品を解読しながらの授業になるが、主眼としては、フランス語と英語の論文を読解することで、中国芸術に対して、別の角度からどのような問題構成を行っているのか、そしてその意味は何かを探ることにしたい。無論、必要に応じて、中国語の文献も読解する。そのため、参加者はどれか一つの外国語の文献を担当することになる。具体的な文献リストは開講時に配布する。
表象文化史演習(冬) 松岡心平中世の稚児について、『稚児草紙』を読みながら考える。
表象文化論実習II(冬) オムニバス講義演劇・映像・哲学・絵画・音楽・文学・政治……多種多様な領域の諸問題をめぐって、ヨーロッパからアジアまで様々な国の文化を横断しながら、6人の講師が重層的に提示する現代の表象文化論のパノラマ。本年度《オムニバス》の中心テーマは、「複製」である。「イメージ」「コピー」「反復」「比喩形象」「ミメーシス」等、複数の意味作用の広がりを包括しつつ、表象的「複製論」が展開される。

講義計画
松浦寿輝《複製論へのイントロダクション》
高橋哲哉《戦死者追悼の表象文化論》
パトリック・ドゥヴォス《演劇の表象文化論》
中島隆博《中国における言語への戦い:模倣せよ、模倣するな》
岩佐鉄男《マルチプルとしての芸術作品》
杉橋陽一《ミメーシス論》
松浦寿輝《まとめ》
舞台芸術論I(夏) 高橋宗吾この授業ではブレヒト演劇の紹介ないしは概説を行います。ブレヒトは20世紀最大の劇作家であると言われますが、どのような意味においてそうなのかを、初期から後期に至るブレヒトの歩みを検討しながらお話しします。ブレヒトは18世紀以来の市民演劇に叙事演劇を対置し、イリュージョンと感情移入に基づく市民演劇を終焉させようとしたという意味において古い演劇の破壊者であると同時に、90年代以降のヨーロッパ演劇の動向を見ると、新しい演劇に先鞭をつけた劇作家であることが今日益々明らかになりつつあります。半年の講義でブレヒトの全体像を明らかにすることはできませんが、主要な作品、演劇理論、演技論などを取り上げ、ブレヒトが何を考えながら叙事演劇を構築していったかをお話しする予定です。
舞台芸術論II(冬) パトリック・ドゥヴォス舞台芸術と戦争
アイスキロスの『ペルシア人』、つまり演劇というジャンルの起源より、舞台は絶えず戦争を問題にしていた。いかに、何のために、何を賭けて戦争が舞台の上で語られてきたのか、という幅広い視野のもとで、(演劇を中心に)二三本の作品を読んで(場合によってはビデオで観て)いきたい。作品名は未定であるが、フランス語で書かれたものになる。
伝統芸能論I(冬) 靳飛上海、北京において展開した京劇の近代化のプロセスについて講義する。
伝統芸能論II(夏) 大倉源次郎 京劇における中国人の夢
小鼓を中心に、能の音楽のしくみとその効果を解説。体験を通して、伝統芸能の世界に触れていただきます。
造形空間芸術論I(冬) 田中純1. 趣旨:記念碑、慰霊碑、追悼施設など、公的な「メモリアル」の造形とその社会的背景について考察する。ベルリンのホロコースト・メモリアル、ニューヨークの世界貿易センター跡地計画、日本の「追悼・平和祈念のための記念碑等施設」を主たる対象とし、計画策定プロセスほかの経緯と(前二者については)メモリアル(的建造物)の具体的なデザインについて詳しい検討をおこない、相互比較を試みる。ベルリン・ユダヤ博物館や各地のホロコースト慰霊碑との比較、アメリカにおける記念碑の系譜の調査、靖国神社など既存の施設との関係といった、それぞれが位置する文化的コンテクストの分析も必要となろう。

2. 授業の方法:講義と演習を組み合わせ、参加者が一学期間に最低1回は30分程度の発表をおこなう予定。人数によってはワーキング・グループに分ける。

3. 評価方法:履修と単位取得のためには、原則として次のすべてを必須とする。単位取得を伴わない聴講は認めない。

1) 授業における発表:レジュメを作成し、必要に応じ視聴覚機材を用いて、わかりやすいプレゼンテーションを、与えられた時間内でおこなうこと。内容とともにパフォーマンスを評価対象とする。全体評価の約25%。2) レポート1(8000字):自分が授業で発表した内容に関するもの。冬休み前に発表した者と冬休み後に発表した者とで提出時期を分ける。論文としての形式(註など)を整えて書くこと。全体評価の約25%。3) レポート2(8000字):授業全体に関わるものとして全員共通のテーマを設定する予定。締め切りは卒業予定者とそれ以外とで異なる(学期末に指定する)。論文としての形式(註など)を整えて書くこと。全体評価の約30%。4) 出席点:言うまでもないが、規則的な出席と議論への参加が強く要求される。毎回必ず出席を記録する。全体評価の約20%。5. 授業日程、参考書:開講時に指示する。
造形空間芸術論II(夏) 建畠晢「野生の近代」というテーマのもとに日本の戦後美術の展開を再考察する。反近代主義を掲げたさまざまな前衛運動の近代的正確を明らかにしていくことになろう。主立った日本の批評的言説と欧米のそれとの比較検討も行う予定である。また時間が許せば、一、二度は開催中の展覧会に出かけてキュレイターたちとの討議の機会を設けたい。
音響芸術論I(夏) 岩佐鉄男〈サウンド・アート〉の可能性
20世紀初頭以来、かならずしも〈音楽〉のカテゴリーに属さない芸術作品のなかで、さまざまな音・音響が用いられている。この授業では、こうした非音楽的音響作品を具体的な作品と理論の両面から考察し、〈音楽〉の成立にも関わるかもしれない〈人〉と〈音〉との関係を新たな視点から考えてみたい。
音響芸術論II(冬) 長木誠司 ドイツの20世紀音楽に関する美学的文献をドイツ語で講読する。テクストは最初の時間に複数用意して、そのなかから希望を取りたい。適宜、実例を聴いて(見て)確認しながら進める。
映像芸術論I(夏) 梅本洋一ヌーヴェルヴァーグ以降の「フランス映画」について考える。採りあげる予定の映画作家は、クレール・ドゥニ、アルノー・デプレシャン、オリヴィエ・アサイヤスなどを予定している。彼らの作品を日本未公開作品まで含めて、ビデオで見ながら討論を進める。
言語芸術論I(夏) 刈間文俊文学はなにを語るのか──人民共和国の文芸史
中国の百年は激動の歴史であった。そのなかで文芸は何を描いてきたのか。とくの20世紀後半の中華人民共和国の文芸史を駆け足で概観してみたい。小説や詩、映画や演劇など、なるべく多くのジャンルを扱い、精読よりも多読を心がけることで、50年に及ぶ文芸史に何らかのまとまりをもたせられればと考えている。間近はインターネット文学まで扱う予定だが、受講者にはひとつでも多くの作品に触れることを求めたい。
言語芸術論II(冬) 河合祥一郎【授業概要】 Hamlet を原文で読み、翻訳や上演との関わりを論じる。
【評価方法】 学期末レポート。出席・平常点を重視。
【テキスト】 Hamlet(大修館シェイクスピア双書)
【参考図書】 河合祥一郎『謎解き「ハムレット」』(三陸書房)、『ハムレットは太っていた!』(白水社)、河合訳『ハムレット』(角川文庫)
表象文化論特殊講義I(冬) 佐藤良明19世紀から20世紀を通しての,アメリカの民衆の娯楽音楽について扱う。毎回10ページ強の英文教材を予習してきたことを前提に,ポピュラーな題材について,商業メディアの言説を振り切って歴史的な思考を組み立てることをめざす。ミンストレス・ソング,ブルース,ラグタイム,ジャズ,“マウンテン・ミュージック”,カントリー音楽,“フォーク”,ロック,ソウル,などたくさんの“ジャンル”から視聴して、ヨーロッパやアフリカから入ってきた音楽様式(および音楽のあり方)がどのようにブレンドし、新しく分離し、ジャンル化していくか、その流れを追う。資料をホームページから配布するので,情報棟の利用を含め,各自ネット環境を整えておくこと。「掲示板」への発言も評価の対象とします。
表象文化論特殊講義II(夏) 石光泰夫19世紀ヨーロッパ舞踊史の研究
基本的にはバレエの歴史をたずねることになるのだが、そのための前提として、舞踊にかぎらず、芸術全般において、この時代に顕著に見られた身体観の変遷をおさえていくことにする。身体論という理論面とその実際の応用である舞踊(あるいはその他の芸術)のあいだをたえず行き来するようにする。ヴィジュアルな資料もできるだけ観るようにするが、今回は文献中心で話をすすめる。特定の外国語を必要とするわけではないが、できるだけ多くの言語が参加する学生によってカヴァーされているという状態が望ましい
表象文化構造・機能論演習(冬) 内野儀パフォーマンス・スタディーズ入門
カルチュラル・スタディーズという言葉が人口に膾炙したのに比べ、それ以前から新しいディシプリンとして登場していたパフォーマンス・スタディーズについては、日本ではまだそれがどのようなものなのか知られているとはいいがたいものがあります。この授業ではパフォーマンス・スタディーズ学科(ニューヨーク大学大学院)をアメリカで最初に立ちあげたRichard Schechnerが大学の教科書として書き下ろしたPerformance Studies: An Introduction (NY: Routledge, 2002)をテクストとしながら、受講者の学問的興味に応じて、その他のパフォーマンス・スタディーズの入門的な文献を読むことにします。講義と演習形式を半々にしながらの授業にする予定です。
表象文化相関論演習(夏) 高田康成David Bordwell & Kristin Thompson, Film Art: An Introduction and Film Viewers Guide (McGraw-Hill), pp. 425.を使いながら、映画を語る際に必要な基本的な事柄を学んでもらいます。
・成績評価:授業での発表・議論、小テスト、期末レポートなどの総合。
表象文化論特殊研究演習I(冬) 梅本洋一現在公開中の作品を毎週一本ずつ採りあげ、それについて討論しながら授業を進める。毎週、指定された作品を見てから授業に参加すること。数多くの映画作品に直接触れることで、映画の現在の問題を把握し、その問題に対して、それぞれの映画作家たちが、どのように立ち向かっているかを知ることが授業の目的になる。
表象文化論特殊研究演習II(夏)古賀太現代において「展覧会」とは何かをあらゆる角度から考えたい。開催中の展覧会を毎週一本、学生に見てもらうことが前提となる。私が今年企画している「田中一光回顧展」(6月21日〜東京都現代美術館)については、企画立案から実現までをリアル・タイムで紹介していく。
表象文化論特殊研究演習III(冬) 一條麻美子中世ヨーロッパの文学における現実の諸相
文学というフィクションの素材から、中世ヨーロッパ世界を概観する。テーマとしては宮廷風恋愛、騎馬試合、モード、ジェンダーなどを考えている。