2009年度授業紹介 ── 大学院

講座名 担当教員 講座内容
文化創造論I
(夏2・冬2)
清水晶子 リュス・イリガライ(論)を読む
90年代以降のフェミニズム理論において再読が試みられつつあるリュス・イリガライの著作およびイリガライについての論考の読解を通じて、イリガライの思想の理解を試みる。とりわけ、1.イリガライにおけるtime/spaceの問題 2.イリガライと視覚/触覚の問題に注意を払いつつ、本質主義的とみなされることの多い彼女の思想とポスト構造主義フェミニズムおよびクィア理論との交錯可能性を探ることを目的とする。夏学期は主にイリガライ論を中心とした読解を行いつつ、必要に応じて彼女の著作を参照する。冬学期については夏学期の状況を考慮して決定する。
論文一本につき一人の担当を決める。受講生は担当する論文について発表をおこない、ディスカッションを主導すること。
・参考文献:C. Burke, N. Schor, M. Whitford eds. Engaging with Irigaray. Columbia U.P. (1994)
それ以外については適宜指示しますが、当面イリガライの初期の著作 (This Sex Which Is Not One, Speculum of the Other Woman, An Ethics of Sexual Difference) については英・日・仏いずれの言語でもかまわないので参照できることが望ましい。
・成績評価:授業における参加・貢献度、担当回の発表、および学期末レポート
文化クリティシズムI
(夏2)
高田康成 M. McLuhan, The Gutenberg Galaxy (1962) を読む
M.McLuhan, The Gutenberg Galaxy (1962) を読みながら、その知的、文化的背景を考察しるるとともに、その今日的意義を探る。
The Gutenberg Galaxyを13回に分けて、詳細に討議する。参加する学生の発表を主とする。
・成績評価:発表と学期末レポートによる
伝統と創造I
(夏2)
松岡心平 世阿弥もしくは金春禅竹の能楽論をゼミナール形式で読む。
文化ダイナミクス演習I
(夏2)
小林康夫 時代と無意識
20世紀のモデルニテにおける文化の諸相をベンヤミンを核にしてとらえる。
前学期にひきつづき、時代と無意識の問題を考えるが、今学期は、1)ベンヤミンのプリズム、2)ベンヤミンの政治哲学、3)イメージ分析の3つの軸をよりながら展開する。
授業は講義+演習。
文化ダイナミクス演習III
(夏2)
高橋宗五 カント著『判断力批判』講読(承前)
今年はカントの第三批判の43節「技術一般について」から50節「芸術作品における趣味と天才の結合について」までを読む予定です。カントのテクストを読む場合必ず Textkritik が必要ですから、出来るだけ多くの版を参照することが望ましく、そのためテクストの指定は致しません。ドイツ語が読めない方は西洋語の翻訳を使用して頂いても結構です。
カントの哲学体系との関係並びに18世紀の「天才美学」を視野に入れてカントのテクストを読み進めます。授業は訳読の形で進めます。
・成績評価:授業を踏まえてレポートを書いて頂き、それを評価し成績とします。
文化ダイナミクス演習II
(夏2)
高橋哲哉 宗教とディコンストラクション
J・デリダに発するディコンストラクション(脱構築)の思想は、アブラハム的宗教への問いかけを含むと同時に、それ自体の「宗教性」が問われる場面を有している。この授業では、デリダをはじめディコンストラクションの流れに属する論者の宗教論を広く検討していく。
今学期は、まず Derrida, J., Comment ne pas parler. Denegations, in : Psyche II, 2003 の精読から始め、次のテクストに進む。
授業は演習と講義の併用。
・成績評価:授業中に発表を担当するか、レポートによる。出欠も考慮する。
*仏語原典を読むことが中心になるが、多くは英訳があり、仏語が未修でも履修は可能。
文化ダイナミクス実験実習I
(夏2)
内野儀 近代演劇の理論II
前年度に引き続き、Martin Puchner (ed.) MOERN DRAMA: CRITICAL CONCEPTS IN LITERARY AND CULTURAL STUDIES (London: Routlege, 2008) 全4巻のうち、3巻目以降に入っている重要な英語論文を読む。
毎回1本から2本程度の英語論文について(30頁前後)、その概要について担当者が発表し、ディスカッションを行う
イメージ分析論I
(夏2)
刈間文俊 中国映画論を検討する
近年、中国映画の研究は、飛躍的に発展している。とくに中国本国での研究の進展は著しい。代表的な論考を比較検討することで、中国映画研究の現況を俯瞰的に眺めることを目標としたい。
初回に、中国映画研究の概況を紹介し、代表的な論考の書目を提示する。各自の担当を決め、二回目以降は、担当者の発表と討論、コメントによって、ゼミ形式で進める。中国語未修者には、中国語以外の文献を担当するよう配慮する。
・成績評価:ゼミでの発表による。必要に応じてレポートを課すこともある。
*関連映画をなるべく多く見ること。とくに東京国立近代美術館フィルムセンターで行われる映画上映並びに映画関連展示に注意を払い、多く見ることを求める。
表象技術論I
(夏2・冬2)
岩佐鉄男 アメリカ実験音楽の系譜1:Henry Cowell
20世紀アメリカの音楽に革新をもたらし、World Music の発見者でもあった作曲家 Henry Cowell(1897-1965)について、その音楽作品と著作、および彼に関する研究を手がかりに考察する。とくにJohn Cageなど、その後の世代の新しい音楽に対して彼がもった意味を考えてみたい。主として英文のテクストを使用。 ・成績評価:平常点+レポート
表象文化史II
(夏2)
一條麻美子 『天上位階論』を読む
授業の目標・概要:ディオニュシオス・アレオパギテスの『天上位階論』を読む。中世以降のディオニュシオス受容の問題も合わせて考える。昨年度夏学期に続き、第2章第5節より読み進める。邦訳を中心に、原文および諸言語訳を対照させつつ読み進める。
・成績評価:平常点およびレポート
アート・マネジメント論I
(夏2・冬2)
浦雅春 エイゼンシテイン映画論研究
1930年代から40年代にかけてエイゼンシテインの著作を読む。今年度は夏・冬を通じて、エイゼンシテインの映画・芸術論を丹念に読んで行く。対象となるのは、いわゆる後期のエイゼンシテインの著作で、1930年代から40年代にかけて執筆されたものが中心となる。授業はいわゆる輪読形式となる。
この時期のエイゼンシテインの著作は、まだロシア語からヨーロッパ言語に翻訳されたものは少ないが、授業では受講者のことを考慮して、英訳のあるものから読み進めていく。
・成績評価:授業への積極的な関与
パフォーミング・アーツ論I
(夏2・冬2)
石光泰夫 パフォーミング・アーツに働く神話の力
神話(ミュートス)が舞台芸術の生成に際してどのように働いたか、またその必然性は何であり、そこに現れた効果はどのようなものであったか。舞台芸術の歴史にとって重要である神話の作用を、ニーチェの『悲劇の誕生』を手がかりにして考えてみる。具体的には、ニーチェとの直接のかかわりでは、グランド・オペラやロマンティック・バレエ、とくにヴァーグナー(なかでも『タンホイザー』)をとりあげる。また西欧とはちがう形の神話作用として、能の『三輪』、文楽、歌舞伎の『妹背山女庭訓』における三輪明神信仰のあとを追跡してみる。それらの原理的概論と、二つの大きなイラストレーションは講師が行うが、それに学生の側から提案される議論が参入してくることを期待する。そのさいの方法や扱う分野は、完全に学生の自由とする。討論付きの講義と、学生による発表をない交ぜにして進めたい。
・参考文献:いかなる言語でもよいから、ニーチェの『悲劇の誕生』だけは読んでおくこと。
・成績評価:平常点(場合によってはレポート)
表象文化論演習I
(夏2)
中島隆博 日本政治思想再考
授業の目標・概要:日本政治思想を表象文化論と比較哲学の観点から再考する。
具体的には、丸山眞男を軸に、戸坂潤、竹内好、和辻哲郎といった思想家を取り上げ、「政治」をどのように表象していたのかを考える。

授業計画:
1 イントロ
2 張旭東先生講義
3 張旭東先生講義
4 戸坂潤
5 竹内好
6 和辻哲郎
7 丸山眞男
8-13 参加者発表
まとめ

授業の方法:最初の二回はNYUの張旭東先生をお迎えし、東アジアという文脈でのモダニティーについて講義をしていただく。その後、授業の半分は、中島が講義を行う。 それを踏まえて、残りの半分は参加者の発表に充てる。

・成績評価:平常点とレポート
表象文化論演習II
(夏2)
松浦寿輝 明治初期・中期の言説空間
明治期の多様な言説に親しむことを通じて、近代の黎明期に日本人が遭遇した様々な思想的・政治的課題に関して一定の概念を持ってもらいたい。福澤諭吉、中江兆民、徳富蘇峰、北村透谷など明治初期・中期の思想家や作家のテクストの抜粋を順次読みながら、彼らの遭遇した思想的・政治的課題について考察してゆく。
・成績評価:学期末のレポートによって行う。
表象文化論実験実習I
(夏2)
田中純 エディトリアル・デザイン研究(雑誌プロジェクト2009 No.2)
授業の目標・概要:知的な雑誌を作る。そのために、エディトリアル・デザインについて研究する。現在において印刷メディア、それも「雑誌」を作ることの意味を考察し、実践する。とりあえず批評誌・思想誌・文芸誌がモデルとなるが、それには限定しない。実験的な発想を歓迎する。

授業計画:特徴的な編集方法やアート・ディレクションをもつ雑誌をいくつか取り上げて分析することを通じ、雑誌を作る技術について学ぶ。読者・目的などを設定して雑誌の企画を立て、分担して取材・執筆・編集・制作を行ない、夏学期末までに完成させる。現役編集者(雑誌ないし書籍)やデザイナーのお話をうかがう機会を設ける予定。
※初回の授業時に参加者は参考になりそうな雑誌を持参すること。雑誌のジャンルは問わない。

授業の方法:導入だけは講義。雑誌の分析は2回くらいで集中して討議形式で行ない、どんな雑誌を作るか、おおよそのイメージを共有する。あとは企画会議と進行状況のチェックやプレゼンテーションを兼ねた編集会議。参加者の技能にもよるが、編集長、編集者、カメラマン、取材記者(インタビュアー)、アート・ディレクターほか、担当を決める。一定の締め切りまでの雑誌完成が共通の使命。
なお、田中はプロデューサーとして全体の進行を見守り、内容の最終的な品質管理は行なうが、現場の指揮は編集長に委ねる予定。

・参考文献:昔の雑誌類。凄い雑誌があったという歴史を知ることは必須である。教科書にあたるものはない。若い感性に期待し、創造性を重視する。
・成績評価:それぞれの持ち場で、雑誌制作のために働いたかどうかで評価する。

*後期課程の学生による「雑誌プロジェクト2009 No.1」とは並行して進行し、競い合う関係にある。夏学期の最後には2つのプロジェクト合同で合評会を行なう。
表象文化論実験実習II
(冬2)
長木誠司 「音をイメージする」とは?
テクストの輪読を通して、音楽を表象文化論的に考えるための方法を検討する。
Richard Leppert 著の The Sight of Sound: Music, Representation, and the History of the Body(1993)、および Sound Judgment(2007)から、講義題目に関する部分を選択して読む。
担当する章ないし部分を決め、個人発表形式および討議検討によって進める。担当テクストは、最初の回に決めて配布するので、購入の必要はないが、興味のある受講者は、夏学期中に全体にざっと目を通しておくとよいかも知れない。
表象文化論実験実習III
(夏2)
河合祥一郎 演劇論/劇評
一回の授業を前半と後半にわける。前半では、スタニスラフスキー、ブレヒト、グロトフスキ、世阿弥などさまざまな演劇論の中から自由に選んで各自勉強して、担当者を順次決めて、発表形式で行う。演劇史的なスタンスから、ある特定の時代の特定の国の演劇の特徴を発表するのでも良い。後半では、上演中の公演について劇評を書く実習をする。全員に2週間に一度ぐらいのペースで原稿を提出してもらい、それを合評形式で切磋琢磨していく。
学生各自が自ら調べ自ら考えるという姿勢で臨む。最終的に『シアターアーツ』などの演劇雑誌に投稿して採用されるような劇評を書けるように実験実習を行う。授業の最初のうちは、課題公演を決め、それについて皆が書く訓練をする。そのうちに自分で選んだ公演について自由に書いてもらう。
・成績評価:劇評ないしは小論をどこかの雑誌・定期刊行物で採用されることを目標にし、その過程の努力を評価の対象とする。