2006年度授業紹介 ── 大学院

講座名 担当教員 講座内容
文化創造論II(夏・冬) 小林康夫 夏学期「表象の舞台1」
ルネッサンスの絵画からはじまる「表象の時代」の文化的枠組みを概説する。資料断片とそのコメントという形式で進行するが、一部は演習形式で行う。
冬学期「表象の舞台2」
モデルニテの時代の「表象の枠組み」を概説する。「投影」から「集積」への転回を論じる。形式は夏学期と同じ。
内容のより詳しい説明は初回に行う。
どちらの講義も、一学期に数度の「コメント」課題の提出を求める。(提出を怠った者の聴講は許可しない。)
文化制度論II(夏・冬) 高橋哲哉 脱構築と宗教
ジャック・デリダの宗教論のテクストを中心に読み進め、ディコンストラクションの問題から「宗教」を考え直す。
テクストはコピーを配布する。
文化クリティスシズムII(夏・冬) 高橋宗五 昨年に続きカントの『判断力批判』を読みます。
今年は第29節にある「美的反省的判断の解明のための一般的注釈」(原書113頁)から読み始めます。授業では一応ドイツ語のテキストを用いますが、ドイツ語のできない方は英訳や仏語訳などの西洋の言語に訳されたものを利用して頂いても構いません。
難解なテクストですので進度は速くありませんが、じっくり腰を据えて古典を読もうという方を歓迎します。
伝統と創造II(夏・冬) パトリック・ドゥヴォス アントナン・アルトーが残した可能性、あるいは不可能性を、20世紀の「身体と言葉」の舞台の中から再検討し続けたい。
それは演劇、ダンス、詩、哲学の各ジャンルの間の境界線を越える舞台でしょうが、グロトフスキ、カルメロ・ベーネ、土方巽というさまざまな名前が出てきます。特に取り上げてみたいのは、フランスで70年代から活躍しているValère Novarinaの作品などがあります。フランス語で書かれた(難解な)文献を扱うので、フランス語で読める能力が必要です。ゼミナール形式で授業を行う予定で、学生の積極的な参加(発表も含める)が要求されます。
文化ダイナミクス演習I(夏) 杉橋陽一 アドルノ『否定弁証法』読解
テーオドーア・W・アドルノの『否定弁証法』(Negative Dialectik)を読む予定である。ドイツ語の原文を丁寧に読解するつもりだが、どの章を読解の対象とするかは参加者と相談したい。さしあたり表題となっているわりあい長めの章か、最後のエッセー風の「形而上学のための瞑想」を考えている。翻訳は作品社から出ている。ドイツ語テキストについてもはじめの授業で決めたい。
文化ダイナミクス演習II(冬) 高田康成 Gil Anidjarの著作を読む
ヨーロッパとユダヤ・アラブ問題を斬新な視点から書き直そうとする新進気鋭ギル・アニジャールの著作を読みながら討論をします。The Jew, the Arab: A History of the Enemy(Stanford UP, 2003)、Our Place in al-Andalus: Kabbalah, Philosophy, Literature in Arab Jewish Letters(Stanford UP, 2002)、およびActs of Religion(by Jacques Derrida) Edited and introduction by G. Anidjar(Routledge, 2001)を取り上げる予定。
文化ダイナミクス演習III(夏) 松岡心平 世阿弥の芸談『申楽談儀』を講読の形で読み進めるつもりだが、初回に集まったメンバーによっては、内容の変更もある。
文化ダイナミクス実験実習I(夏) 河合祥一郎 実験実習ということで、いろいろなことに挑戦してみたい。劇評家養成講座と銘打ち、月に1度、ある一つの公演をめぐって劇評合評会を行い、劇評を作り上げることを目玉にしてみようかと思う。その他、毎回担当者を決めて、蜷川幸雄のシェイクスピア公演など、シェイクスピアの上演について発表をしてもらう。授業の前半ではPeter Ackroyd の書いたシェイクスピアの伝記Shakespeare the Biography を読みつつ、シェイクスピアとその時代への認識を深めることも同時進行したい。授業の最終部では、参加者それぞれ独自に定めたテーマで研究発表を行ってもらう。委細は参加者と相談の上決定する。
文化ダイナミクス実験実習II(冬) 佐藤良明 「1961」
42歳のアメリカ新大統領が就任演説を行った1月、日本の文芸誌には、25歳の新進作家による「セブンティーン」が載った。ソ連の宇宙飛行士が「地球は青かった」と伝えた4月に、ハンブルクのクラブではリヴァプール出のロックンローラーが連夜の熱演をしていた。東大駒場の想像上の大学院に入学した君は、西田佐知子が流れる書店でどんな雑誌を手に取り、どんな展覧会に行って何を考え、たとえば本郷仏文M2のH君とどんな議論をするのだろう。この実験実習の時間に、1962年以降は、その言説を含め、存在してはならない。最初の2回をイントロダクションに当てるが、以降は担当者が図書館、ビデオ屋、インターネットを探索し「わたしの1961年」をレポートする。ゼミの目的は「1961年を知る」ことよりむしろ、自分の研究も存在も歴史に依存しているという実感をつかむこと。発表にはプレゼンテーション・ソフトを使ってほしい。sgtsugar.com に情報交換の掲示板(closed)を設ける。
イメージ分析論II(夏・冬) 中島隆博 中国近代美学史について 朱光潜の美学テクストを読解する。
朱光潜は、1920年代・1930年代のヨーロッパ美学さらには心理学の議論を参照しながら、近代美学を中国で打ち立てようとしたが、それがいかなる問題意識の下にあったのかを明らかにする。その後、朱以後の中国美学の議論(宗白華、李沢厚等)が何を継承し、何を批判したのかも考える。中国語だけでなく、英語・フランス語のテクストを取り上げるので、参加者には様々な仕方で寄与していただきたい。
表象技術論II(夏・冬) 田中純 アビ・ヴァールブルクが晩年に作成した図像アトラス「ムネモシュネ」の分析を共同でおこなう。
最終ヴァージョンのパネル63枚のうち、20枚ほどを取り上げ、それぞれのパネルに集められた図像の関連性について、可能なかぎり詳細な検討を試みる。基礎資料となるのは、Aby Warburg: Gesammelte Schriften. Studienausgabe. Hg.von Horst Bredekamp et. al. Zweite Abteilung, Bd. II.1: Der Bilderatlas MNEMOSYNE. Zweite, erganzte Auflage. Herausgegeben von Martin Warnke unter Mitarbeit von Claudia Brink. Berlin: Akademie Verlag, 2003.
各パネルについては、こちらでコピーを用意する。「ムネモシュネ」 に関する基本的な情報は、拙著『アビ・ヴァールブルク 記憶の迷宮』(青土社)を参照のこと。参加人数にもよるが、履修者はグループに分かれ、それぞれ担当のパネルについて、基本情報(図像の名称・属性など)の整理、図像相互の関係性の解読を共同でおこない、授業の際に発表する。その方法などについては、学期の初めに解説する。ドイツ語の読解能力のある者数名の参加が望まれるが、その他の参加者については必ずしもドイツ語の能力を必要とはしない。なお、上記の原典資料(ただし初版)についてはイタリア語版もある。作業全体の参考書として、前掲拙著のほか、『ヴァールブルク著作集』全7巻(ありな書房)、E・H・ゴンブリッチ『アビ・ヴァールブルク伝:ある知的生涯』(晶文社)、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『残存するイメージ』(人文書院)などを利用する。追加情報はホームページで通知する。なお、この授業とはまったく無関係な研究発表の場として、隔週金曜日6限(履修希望者の都合によっては曜日・時間帯を変更する)にコロキウムを設ける。このコロキウムについても上記サイトに情報を掲示するので、それを読んだうえで、参加希望者は第一回の集まりに参加するか、田中に連絡すること。
表象文化史I(夏・冬) 松浦寿輝 オーラル・ヒストリー構築の試み
書かれたテクストの形で残されないまま口承で語り継がれる体験・知識・記憶によって織りなされる「歴史」の問題を考察しつつ、かつその構築の実践を試みる。
その実践の部分は具体的には、受講者に「一学期のうちに有意味的なインタヴューを一つ実現すること」という課題を課すことから成り立っている。インタヴューの対象は現在七十歳以上で、日本ないし外国の、芸術・文化・文学・学問の領域で優れた業績を持つ個人、ということにしたい。授業はそのインタヴュー準備のための情報交換、打ち合わせ、まとめ方をめぐる講義、実現のためのノウ・ハウの模索、またさらに「インタヴュー」という知的メソッドをめぐる理論的考察、などに費やされることとなろう。まず受講者一人一人にそれぞれの「インタヴューイー」を選んでもらうところから始め、有意味的な談話の獲得に向けて努力してもらうことになるので、個別指導が中心になると思われる。最終的なインタヴューの成果によって成績評価・単位認定を行うこととする。
アート・マネージメント論I(冬) 浦雅春 ロシア・アヴァンギャルド芸術におけるメイエルホリドの位置をめぐって関係論文を読む。
差し当たってはエイゼンシテインとメイエルホリドの関係を探ってみる予定だが、開講時に関心が移っている可能性もあり、授業についての詳しい内容は開講時に指示する。
アート・マネージメント論II(夏・冬) 長木誠司 映画を巡る要素のなかでもっとも研究が遅れていると思われる音楽に関して、歴史的・体系的に考察する。
夏学期は考察の方法論そのものの検討に始まり、代表的な映画音楽論を参考にしながら、具体的な作品を各自が担当して、映像の欲望を音楽がどのように表象・代理するかということのさまざまな事例を探る。冬学期はもう少しテーマを限定し、J.Joe & R. Theresa(ed.), Between Opera and Cinema. などを参考にしながら、オペラと映像の関係について総合的に考察する。オペラそのものの映像化のみならず、オペラの中の映像、映像の中のオペラなど、オペラに内包される欲望の契機を、舞台の外部に成立するイメージがいかに表象させるかということを基本的な視点にしたい。いずれの学期も各自がなんらかの特定の作品(複数)に関して問題意識をもって参加することを希望する。
パフォーミング・アーツ論II(夏・冬) 内野儀 Fredric Jameson研究
アメリカの文化理論家/文学研究者のFredric Jamesonについての演習授業を行います。夏学期はJamesonの代表的エッセイを集めたリーダー的な書物 The Jameson Reader(Malden, Mass:Blackwell Pub., 1999)と、Jameson理解の一助のためにJameson論を集成したFredric Jameson: A Critical Reader (NY: Palgrave Macmillan, 2004)を併読し、冬学期は最新作である大部のArcheology of the Future: The Desire Called Utopia and Other Science Fictions (NY: Verso, 2005)を読む予定です。毎回かなりの量で、しかも難解でもある理論的な英語の文章を読み、それについてのまとめを発表し、各自がコメントするという形式で授業を行います。評価は、授業での貢献度と夏学期冬学期のそれぞれで、Jameson がらみで扱った主題/問題についての、各自の専門分野とかかわるレポートを400字詰め原稿用紙10枚程度の長さで提出していただきます。テクストはなるべく各自で入手しておいてください。
表象文化論演習I(夏) 刈間文俊 中国映画雑誌を読む
1930年代から40年代に上海で出版された映画雑誌を読む。この時期は、上海の租界を中心に中国映画が最初の黄金期を迎え、やがて日中戦争による日本軍の占領下に入るという激動の時代だった。そのなかで、映画をめぐって何が語られ、何が問題とされたのか。当時の言説を忠実に追うことで、一次資料を扱う手つきを磨くきっかけとしたい。中国語文献を扱うことが多いが、中国語未修者にはそれなりの配慮をする予定であり、積極的な参加を期待したい。
表象文化論演習II(冬) 石光泰夫 「ディオニューゾス的」という概念が曖昧なままに濫用されている。この概念を単に理性によらない自然的・野生的・情念的なものという程度の表層的な理解から解き放ち、理性との二項対立など超えた彼方からもう一度正しく召還するためにニーチェの「悲劇の誕生」を読む。そしてそのうえで、そこから哲学的に、あるいは文献考古学的に読みとりえた真に祭祀的な「ディオニューゾスとディオニューゾス的なるもの」が様々な芸術ジャンルでいかなる時代に、いかなる造り手のもとで姿を顕しているかを具体的に検討する。
表象文化論実験実習I(冬) 岩佐鉄男 〈聴く/聞く〉ことを考える
わたしたちが日常的に実践している「音をきく」ことにまつわる問題系に対して、実験実習的な要素もまじえて、さまざまな方向からのアプローチを試みる。まず最初は、Pierre Schaefferの"Solfège de l'objet sonore"を扱う予定。
表象文化論実験実習II(冬) 一條麻美子 トリスタンとイゾルデ
ワーグナーの楽劇、コクトー脚本の映画「悲恋」などを見ながら、現代における伝説の変容を考えたい
超域文化科学特殊演習I(夏・冬) 滝浪幸次郎 近世の演劇
歌舞伎や文楽の作品を読みながら、視聴覚資料も活用し、近世の演劇について考察する。具体的にどの作品を扱うかについては、初回の授業のときに参加者と相談して決定する。冬学期には、近世芸能論のテクストを講読する予定です。
この演習は、留学生を対象としています。