リンク集

表象文化論学会の設立



2006年7月1日、東京大学駒場キャンパスで開かれた設立総会において、表象文化論学会が正式に創設された。初代会長には松浦寿輝氏が選出されている。この学会は、2005年11月19〜20日に東京大学表象文化論研究室が主催し、同じく駒場キャンパスでおこなわれた設立準備大会をへて、今回の発足にいたったものである。設立趣意書は学会創設の抱負を「既存の学問・芸術ジャンルに囚われず、絶えず越境と横断を繰り返しつつ未知のフロンティアを開拓しようとする若々しい精神たちに、豊かで生き生きとした〈交通〉の可能性を開きたい」と謳っている。


設立準備大会では、人文知と表象文化論の可能性を探るため、2つのシンポジウム「閉塞する人文科学を超えて──いま、芸術を問う」(パネリストは岡崎乾二郎、中沢新一、ファブリアーノ・ファッブリ、リピット水田堯の各氏、司会・田中純)および「表象のメディエーション──知の現場・現場の知」(パネリストは古賀太、住友文彦、常石史子、三浦雅士の各氏、司会・佐藤良明氏)を開催した。さらに、「表象不可能なものの回帰──〈カタストロフ〉以後の暴力批判」「ネゴシエーションズ──イメージとその外部」「近代の上演」という3つのパネルを構成して、学会における研究発表のモデルを提示することも試みた。この準備大会は一般に公開され、多数の聴衆を集めている。


そして、この機会に学会設立発起人のなかから表象文化論学会設立準備事務局が編成され、会員の募集や設立総会、第1回大会の準備を進めてゆくことになった。その過程で、第1回大会の研究発表については、パネルのテーマをまず募集し、その提案者がパネリストなどの人選をおこなうという新しい組織形態を採用するなど、学会活動をより活性化する形式が模索されていった。 設立総会の時点で、会員は120名、賛助会員1社であった(2006年9月現在の会員は200名弱)。そこで定められた学会のおもな活動内容には、毎年春の大会と秋の研究発表集会(2006年度は11月18〜19日に東京外国語大学で開催)実施のほか、学会誌『表象』の刊行、Webによるニューズレター『REPRE』の発信などがある。


設立総会に続く第1回大会では、ミハイル・ヤンポリスキー氏(ニューヨーク大学)による基調講演「Metaphor, Myth and Facticity」や浅田彰氏と松浦寿輝氏の対談「人文知の現在」のほか、桜井圭介氏と内野儀氏が導入をおこなったパフォーマンス公演(チェルフィッチュ、室伏鴻氏、KATHY)がおこなわれた。翌7月2日には、「日本芸能史における〈女性的なもの〉」「Medium and Anamorphoses」「鏡の背面──表象のヒューマニズム再考」「スクリーンの近代──遮蔽と投射のあいだで」「ロシアの(逆)遠近法」「エイティーズ・アート」という6つのパネルが組まれ、それぞれ活発な議論が展開された。この大会は非会員にも有料で公開され、非常な盛況であった。なお、学会設立の動きや第1回大会については複数の新聞で報道がなされ、とくに朝日新聞には松浦会長と田中純事務局長のインタビュー記事が掲載されている。


入会手続きの方法など、表象文化論学会に関する基本情報はWebサイト(http://www.repre.org/)で得ることができる。大会の報告や会員による新刊紹介ほかの記事が満載されたニューズレター『REPRE』もこのサイト内で公開されている。表象文化論学会事務局は現在のところ、東京大学表象文化論研究室内に置かれているが、問い合わせは原則として電子メール(repre@repre.org)で受け付けている。


この学会は、「専門」の殻に閉じ籠もった同業者のギルドではなく、あくまで自由な運動体として、果敢な実験精神に向けて開かれている。その企てに対し、さらに多くの有志の方々の参加を願ってやまない。


(表象文化論学会事務局長 田中 純)